本研究室の就職先(50音順)
アジレントテクノロジー アドバンテスト アルネアラボラトリ アルファーシステムズ アルプス電気 アンリツ(2名) 伊藤忠テクノサイエンス 医薬品医療機器総合機構 ウェスタンディジタル 宇宙航空研究開発機構(JAXA)(2名) NEC(4名) NHK(3名) エヌエフ回路設計ブロック NTTデータ(2名) NTTドコモ NTT西日本 NTT東日本(2名) NTT研究所(3名) エリオニクス 大崎電気 沖電気 オムロン オリンパス 川崎重工 キャノン(8名) キューブシステム |
京三製作所 KDDI(3名) 京都大学 警察庁 国税局 サムスン 産業技術総合研究所(2名) santec 三洋電機 シスコシステムズ 島津製作所(3名) シャープ(2名) 情報システムエンジニアリング シンプレックス スタンレー電気 ステップ スパンションジャパン 住友電工(3名) ソニー(5名) ソニーSS(4名) 高砂香料工業 TDK(3名) TBSラジオ テクノプロデザイン データコントロール テルモ |
電源開発 デンソー(2名) 東芝(3名) 東京エレクトロン 東京自働機械製作所 東京精密 東京通信ネットワーク 東京電力(3名) 東光電気工業 東陽テクニカ トヨタ自動車(4名) 豊田自動織機 ニコン 日産自動車 日本航空(2名) 日本学術振興会 日本テレビ放送網 日本プロセス 日本ユニシス 野村総研(2名) パイオニア パナソニック 浜松ホトニクス 日立オートモーティブ 日立製作所(4名) 日立金属 |
ブイ・テクノロジー フジクラ(5名) 富士通(4名) 富士フイルム 富士通フロンテック 物質材料研究機構 フューチャーアーキテクト 古河電工(7名) 北陸電力 みずほ銀行 三菱電機 三菱東京UFJ銀行 武蔵エンジニアリング メイテック モトローラ ヤマハ ヤマハ発動機 ヨコハマシステムズ 横浜市役所 吉田製作所 讀賣テレビ放送 リコー(3名) ルネサスエレクトロニクス ローム |
昨今の就職事情
近年の状況:
基本的にいまの日本は人不足なので求人は多く,わがままを言わなければ全員が就職できます.ただし日本では従業員を簡単に解雇できない制度になっているので,優秀で長く働ける人に来てほしいという企業の要望が高まっており,就職面接等での人物の見極めは厳しくなっています.一方で,有名一流企業でさえもグローバル化の波にさらされ,数年後にはどうなっているかわからない不安定さも増しています.そのため,学生は,会社がどのような状況になってもやっていける,あるいは会社に頼らずともやっていけるようになる必要があります.
企業での実力とは:
仕事の能力=学力という側面は当然ありますが,企業人はコミュニケーション力とモーティベーション力をよく口にします.つまり人付き合いとやる気です.企業に入ると,多くの場合,10年以上働き続けますから,同僚と長くつきあうことになります.一緒に働きたくなるような人に来てほしいと考えるのは自然です.ただし,単に面白いキャラクターが好まれるわけでなく,むしろ人付き合いを壁と感じずに仕事を進められる人が望まれます.他人に何かを聞かなければならないとき,他人に頼らなければならないとき(そんなシーンが企業では非常に多い)に,臆せず反発もされず相談できる能力が大事です.また他人からプレッシャーを受け,難しい状況になったときにも跳ね返し,納めることができるタフさも大事です.幅広い人たちとフラットに付き合ってきたかどうかが試されます.また,「やる気」はよく聞く言葉ですが,やはり重要です.実際,やる気がある人とない人では仕事の進み方が100倍違います.通常,何かやる気を起こさせる褒美を出すのが上司の常套手段です.しかし長い人生,常に褒美が用意されているわけではありませんし,そういう方法でしかやる気が出せない人は,褒美がないと不満を感じるので,人生の多くをネガティブな気持ちで過ごすことになって不幸です.また,他人にやる気を与える余裕がないので,人を牽引するリーダーになれません.企業が期待するのは,自分の中にやる気を作り出すエンジンを持っている人です.このようなエンジンは一朝一夕にはできません.エンジンを作るために多くの人が言うのは,目の前のことを一歩一歩!です.小さなことは小さな努力で解決でき,すぐに成果を実感できます.これを小刻みに繰り返せば,褒美がなくても前進する喜びが生まれ,それを継続することでやる気を定着できます.イチローは「自分の限界をわずかに超える努力をしてみよう」と言っています.これもわかりやすい目標だと思います.自分の限界を知るだけでも非常に有意義です.
雇用の変化:
最近,企業では,離職率,つまり就職してもすぐに辞めてしまう人の割合が上昇しています.会社の厳しい仕事についていけない,自分がやりたい仕事ではなかった,などの理由がよく聞かれます.実際,企業の綺麗なパンフレットを見ながら,学生時代に思い描いた仕事生活が送れるケースはまれでしょうし,就職すれば,企業の事情で様々な現実や制約が待ちかまえているので,実際にその立場に立つと仕事の厳しさが全く違って見えてくるはずです.この状況を避けるため,企業は就活前にインターンなどで学生とのコンタクトの機会を多くもつようになってきています.ただしインターンの本来の目的である職業体験ができれば有意義ですが,最近急増している夏から秋にかけてのインターンは,単なる会社説明と学生の早期確保が目的の形式のものが多いです.また,このようなインターンも結局はお客様(=学生)仕様になっているので,いざ就職してみると,やっぱり会社の内情や仕事の内容は違って見えるはずで,そのため離職は後を絶ちません.社会の流動性が高まったと好意的に捉えることもできますが,働きながらスキルや実力を磨くことは企業側も社員側もあまり期待できない状況になっています.つまり社会を渡り歩く自由人を目指すなら,社会に出る前に自分を磨いておく必要性が以前よりも高まっているということです.
就職手順,就職先:
就職には大学推薦により大手メーカーなどへの内定を受ける方法と,学生が独自に一般公募の就職試験を受ける方法があります.以前は前者がほとんどで,しかも大学が推薦した学生を企業が内定しないことはありませんでした.これは人間関係が密接に絡んだ旧来の方法ですが,学生を卒業研究に集中させ,企業が面接や調査にかける労力やコストを減らすのに有効でした.ところが最近は,上に述べたように学生と仕事のマッチングが重視されるようになったことに加え,自主性や自立性,時代の変化に即応できる柔軟性も求められるようになっています.また,有名大学への入学を最終目標した学生が増え,同じ大学内でも入学後の大学生活の過ごし方によって学生間に大きな個人差が生まれています.そのため,企業ではコストも顧みず,大学推薦者に対して実質的な面接試験を実施しており,出身大学を評価しながらも,最終的には個々人を見て合否を決定しています.その結果,かなりの学生が選別され,不合格となっていますが,このような傾向を学生側も十分にわかっているため,大学推薦に頼る学生は以前に比べて減少し,一般公募で積極的に内定を採ることの方が多くなりつつあります.一般公募を実施する企業はメーカーやインフラだけではなく,官公庁,マスコミ,金融など様々です.近年の就職活動の時期は流動的ですが,本格化するのは就職する1年半前の秋ごろからです.でも,インターンを実施することを目指す学生は,その応募のために就職する2年前から動き出します.つまり大学や大学院が就職活動を行うための時間になりつつあり,これが学生や企業にとって幸せな状況なのか,もっと議論や対策があってもいいような気がします.
面接試験:
就職面接試験の形態は企業によって様々で,実態を簡単に説明するのは難しいです.それでも,学生一人に対してせいぜい数10分間でしょう.このような短時間にチェックされるのは,大学での研究内容やその企業に対するビジョン等ですが,その会話の展開にも注意が払われます.指導本などで仕入れてきたテクニックはすぐに見破られます.話の内容が首尾一貫して明快であるか,他人の受け売りではなく個性的か,そもそも大人の会話がきちんとできるか,などが重要です.そもそも,その企業とその学生をつなぐはっきりした理由はどこにあるのか,なぜ他社ではなく,その企業なのか,という点を明快に説明できると,企業側にとっては強い印象が残るはずです.このような項目は短時間の練習では対処できません.大学生活で自己を磨き,大人として自立できたかどうか,自分の考えをもって行動しているか,など人間としての総合力が問われます.
グローバリゼーションの波:
1990年代後半のITバブル期には,情報通信産業に異常な投資が行われ,世界規模のネットワークが構築されました.その後のバブル崩壊以降,このネットワークが格安で買い叩かれ,異常な低価格のブロードバンド通信が広く普及することになりました.これによって世界各国の産業が容易に連絡をとりあえる状況が構築された結果,中国やインド,その他の国々の安価で膨大な数の労働力がその国に居ながらにして他国の産業を脅かし始めました.企業の仕事には創造的なタイプと単純労働的なタイプがあります.特に後者については,高い賃金で国内労働者を雇用するととても国際競争に勝てないので,企業は積極的にこれらの国々を利用するか,国内で安い外国人労働者,もしくは日本人でも低賃金の労働者を確保するようになりました.近年,パートやバイト,人材派遣業が一般化しているのはそのためです.正社員との待遇の格差が広がり,社会問題になっていますが,これは簡単に解決できる問題ではありません.一方,正社員の人数が相対的に減り,正社員にしかできない仕事が集中し,過酷な労働を強いられるケースも増えています.また,昨今の人不足はますます深刻さを増しています.そのため,そもそも正社員が日本人である必要はない,管理職が外国人でもいい,と考える企業も増えました.日本人が,モチベーションが高い外国人と本気で競争しなければならない状況は間近に迫っており,学生にも強い覚悟が求められます.
AIのインパクト:
2010年代後半に本格化したAIブーム.そして2022年に登場した生成AI.その進歩はすさまじく,急速に社会を変えています.今後,なくなっていく業種がよく話題になりますが,全く現実の話です.例えば筆者が使っていた英語翻訳・添削業者は一昨年に廃業しました.英語の重要性が叫ばれているにも関わらず,です.プログラムについてもAIの自動生成能力はかなり優秀で,人気職業なはずのプログラマーの今後もわかりません.芸術もそうです.人間活動のビッグデータが元になっているので既視感が否めませんが,それでも新作品が短時間で作られる状況はユーザーには痛快,業界人には脅威でしょう.そして,最後に残るのはリーダーだけ,と言う人もいます.しかしリーダーは周囲の情報を集め,それを元に利益を生む今後の活動方針を決めて部下に指令を出す人です.実はこれもAIの得意分野に思えます.今のところ,実働を伴う分野ではAIの影響は間接的です.今後,ロボットが人間並みの機能をもつようになり,それとAIが本気で連携するようになるまでは...でも,これもおそらく遠い将来ではないでしょう.では何が本当に残るのか,誰もが注意深く考えて,自分の未来を決めていく必要があります.
社会を勝ち抜くためには:
近未来社会,そしてAI社会を勝ち抜くためには,ビッグデータのどこにも前例のない個性や独創性が求められるでしょう.実際,YoutubeやTikTokでバズっている動画には,どんな些細なことでも,どこかに見たことのない新しさがあります.これらは,偶然に生まれたほんの一瞬の出来事(セレンディピティ)の場合もありますが,作成者に常人を超えたこだわりや追求心があって,それが個人の趣味の域を超えて視聴者の心を動かしたものも多いです.最初から日々の仕事として期待するのは簡単ではありませんが,自分の仕事の傍らでこういった引き出しをいくつか持っておくことは,何かのきっかけで本業を成功に導く,または本業以外で成功する重要な要素になる可能性があります.したがって,それが役に立つかどうか判断がつかないことでも,まずはやってみて,自分に合うと感じたら,さらに強いこだわりもって継続的に取り組むことができる力を鍛えることが大事ではないでしょうか.